2026/02/12 18:22



「縁は異なもの味なもの」と申しますが、人生には思いもよらぬ出会いがあり、それが時を経て大きな意味を持つことがあります。振り返れば、私にとっての #ぶどう山椒 との邂逅も、まさにそのような縁でございました。

お店を始めるにあたり、ただ「お誂え調合」だけでは足りない、何か一本、核となる存在──いわばコアコンピタンスを補う要が必要だと考えていました。看板となるべき一品が欲しい。そう思い悩んでいた頃のことです。

その糸口は、ひとりのお客様との縁から始まりました。七味をきっかけに親しくなり、その後の偶然の連なりによって、有楽町の交通会館にある和歌山県のアンテナショップへと足を運ぶことになります。棚に並んでいた小瓶の「ぶどう山椒」。蓋を開けた瞬間に広がる芳醇な香りに、私は心を奪われました。果実のように瑞々しく、深みのあるその風味に「これだ」と直感したのです。
試行錯誤を重ね、やがて完成したのが ぶどう山椒風味の『特撰・紀奥』。小瓶では仕入れに限界がありましたが、勇気を出して「JAありだ」さんに七味に調合したい旨、相談したところ何とご厚情で七色唐辛子用に卸していただけることとなりました。こうしてようやく商品化の目処がたったのです。

その後、実際に和歌山県有田川町を訪ね、生産者の皆さまの温かなおもてなしに触れる機会を得ました。同時に、ぶどう山椒の生産を維持することの大変さ──担い手不足や労力のかかる作業、気候の影響など、多くの課題にも目を向けることになりました。だからこそ、私にできることは一つ。この香りを広め、少しでも #ぶどう山椒の認知度を上げること。そして生産者にも消費者にも明るい未来を描けるよう、日本の誇るべき自然の香りを絶やすことなく伝えていくことです。
こうして誕生した『特撰・紀奥』は、山椒好きのお客様はもちろん、その香りに魅了された多くの方々に支えられ、弊舗の看板商品へと育ってまいりました。

ひとりのお客様との縁、有楽町での偶然、そして有田川町の生産者さん達の温もり──数々のご縁が積み重なり、七色唐辛子という小さな器に凝縮されました。まさに「縁が育んだ味」と申せましょう。
これからも、この縁を大切に、ぶどう山椒と共に歩み、日本の自然が育んだ香りを未来へと伝えてまいります。